MASLD、MASH、NAFLD、NASHの違いを整理する
MASHを読む前の用語整理
MASLD、MASH、NAFLD、NASHの違いを整理する
脂肪肝、MASLD、MASH、NAFLD、NASHは似ていますが、同じ意味ではありません。特に薬剤や検査の情報を読むときは、この違いを分けて理解することが大切です。
結論は、脂肪肝、MASLD、MASH、肝線維化を同じ言葉として扱わないことです。
MASLDは代謝リスクを伴う脂肪性肝疾患、MASHは炎症や肝細胞障害を伴う状態です。
「脂肪肝なら薬で治る」「MASHと脂肪肝は同じ」という理解は不正確です。
用語の次は、線維化、肝硬変、心血管リスクを分けて理解します。
この記事は2026年6月19日時点の公表情報に基づく一般向けの医療情報です。個別の診断・治療方針は担当医と相談してください。本記事は三浦正樹個人の情報発信であり、所属機関の公式見解を示すものではありません。特定薬剤の使用を勧める広告ではありません。
薬剤治療の適否は、適応に該当する可能性がある場合でも、診断、線維化評価、併存症、安全性、生活療法の状況を踏まえて主治医が個別に判断します。
この記事の要点
MASLDとNAFLDは何が違いますか?
NAFLDは従来使われてきた「非アルコール性脂肪性肝疾患」という名称です。MASLDは、脂肪肝に加えて、肥満、血糖異常、高血圧、脂質異常などの心血管代謝リスク因子を1つ以上もつ場合として整理された新しい名称です。
MASHとNASHは何が違いますか?
NASHは従来の「非アルコール性脂肪肝炎」、MASHは代謝機能障害関連脂肪肝炎です。臨床的には、脂肪蓄積だけでなく炎症や肝細胞障害を伴う状態として理解します。
ウゴービは脂肪肝全体に使える薬ですか?
そうではありません。日本で承認されたMASH適応は、肝硬変を伴わないMASHで、中等度又は高度の線維化を有する場合に限られます。
用語を表で整理する
| 用語 | ざっくりした意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 脂肪肝 | 肝臓に脂肪がたまっている状態 | 原因は代謝、飲酒、薬剤など複数あり得ます。 |
| NAFLD | 従来の「非アルコール性脂肪性肝疾患」 | 旧用語として論文や診療記録に残ります。 |
| MASLD | 代謝リスクを伴う脂肪性肝疾患 | 脂肪肝に加えて、肥満、血糖異常、高血圧、脂質異常などの心血管代謝リスク因子を1つ以上もつ場合として整理されます。 |
| NASH | 従来の「非アルコール性脂肪肝炎」 | 旧用語です。 |
| MASH | 代謝機能障害関連脂肪肝炎 | 炎症や肝細胞障害を伴い、線維化評価が重要になります。 |
なぜ名前が変わったのか
NAFLD/NASHという名称は、主に「アルコールではない」という否定形で疾患を説明していました。2023年の多学会合意以降、脂肪性肝疾患の名称は整理され、代謝リスクを含む表現としてMASLD/MASHが使われるようになりました。
これは単なる言い換えではありません。肥満症、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧などの代謝リスクと肝臓の病気を一体で考えるための整理です。
なお、NAFLDとMASLDが完全に1対1で置き換わるわけではありません。飲酒量や背景によっては、MetALDなど別のカテゴリーとして整理される場合があります。
脂肪肝に代謝リスクが重なる広い疾患群。
MASLDの中で、炎症や肝細胞障害を伴う状態。
慢性的な障害で肝臓が硬く傷あとを残していく変化。
MASLDとMASHの違い
MASLDは広い枠組みです。脂肪肝に代謝リスクが重なる疾患群と考えると分かりやすいです。
一方、MASHはその中で、脂肪蓄積だけでなく炎症や肝細胞障害を伴う状態です。さらに線維化が進むと、肝硬変や肝がんなどのリスク評価が重要になります。
「ウゴービが脂肪肝の薬になった」は正確ではない
2026年6月19日に日本で承認されたウゴービのMASH適応は、脂肪性肝疾患全体を対象にしたものではありません。対象は、肝硬変を伴わないMASHで、中等度又は高度の線維化、おおむねF2からF3に相当する線維化を有する場合に限られます。
承認された治療選択肢であっても、すべての該当患者さんに自動的に使うという意味ではありません。食事・運動療法や併存症管理は引き続き治療の基盤であり、薬剤治療の適否は主治医と相談して判断します。
したがって、読者向けには次のように言い換える方がより正確です。
| 危ない表現 | より安全な表現 |
|---|---|
| ウゴービは脂肪肝に効く薬 | ウゴービは、条件を満たすMASHに対して承認された治療選択肢です。 |
| 脂肪肝なら薬で治る | 脂肪肝の評価では、代謝リスク、MASHの有無、線維化の程度を分けて考えます。 |
| MASHと脂肪肝は同じ | MASHは脂肪性肝疾患の中でも炎症・肝細胞障害を伴う状態です。 |
次に知るべきこと
用語が整理できたら、次に大切なのは「脂肪肝で本当に怖いものは何か」です。肝臓に脂肪があるかどうかだけではなく、線維化、肝硬変、心血管リスクを分けて理解する必要があります。
続けて読むと理解が深まる記事
- ウゴービとMASH:脂肪性肝疾患への適応追加で何が変わるのか
- 脂肪肝で本当に怖いのは何か:線維化、肝硬変、心血管リスク(準備中)
- 肝線維化をどう評価するか:血液検査、FIB-4、エラストグラフィ、肝生検(準備中)
- Multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. PMID: 37363821.
- EASL-EASD-EASO Clinical Practice Guidelines on MASLD. PMID: 38851997.
- AASLD Practice Guidance on NAFLD. PMID: 36727674.
- 住友ファーマ「ノボ ノルディスク ファーマとプロモーション提携中のウゴービ皮下注 MASHに対する承認を取得」2026年6月19日。
